不滅の妖怪を御存じ?
「我と共に、6550万年前へ行く人間だ。妖怪は、牛木の片割れだ」
パチリと。
有明は目を見開く。
彼が初めて九木の前で素の表情を見せた。
「牛木は九木様では?」
「願いの口だけはこやつが持っている。何、すぐに殺す。時間はとらせぬ」
そう言って、ぐあっと九木が口を開けた。
ねっとりとした口内。
ダンを飲み込む気だ。
まずい、と藍は思った。
今ダンを殺されるのはまずい。
藍がダンを突き飛ばすのと、有明が声を張り上げたのは同時だった。
「過去へは何をしに!?」
ギョロリと九木の目が動く。
勢いを削がれたのか、ゆっくりと有明の方を向いた。
「確かめるのだ。この人間が言う、恐竜とやらが絶滅したか否かを」
「恐竜?」
「知りもしない過去を偉そうに語り、いい気になっている人間。現実を、見せてやるのだ」
藍はダンの元へより彼を抱きしめた。
それから有明へ顔を向け、必死で口パクをする。
もうヤケだ。
絶対に、ダンを今殺されるわけにはいかない。
「一緒!一緒!」と口パクと身振り手振りで訴える。
有明は一瞬こちらに目を向けたが、理解したかどうかは定かではない。