不滅の妖怪を御存じ?
「あの人間、こちらに来る前に何か言っていたな」
「はい?」
思い出したかのような九木の言葉。
何かって。
何か、言ってたか。
あ、言ってたな、そういや。
何でここでそれ言うんだって思ったな、と有明は独りごちる。
6550万年前の風景に対応するのに精一杯で忘れていた。
「確か、ピエロ伝道者、と」
「何だそれは」
ギンッと、眼光鋭く睨みつけられる。
有明は反射的に縮こまり、声が震えた。
「物語です。人間の」
何かあの人間が企んでいたのではないか。
そんな圧力をかけながら、九木は有明を睨む。
そう問われても、有明にだって分からない。
ピエロ伝道者なんて、竹内蛍が暗唱するのを聞いただけなのだから。
「天狗の弓月が好きだった話だ、とか」
多分、そうだったはずだ。
有明がしどろもどろにそう言うと、一気に九木の殺気が強くなった。
「天狗!」
「ヒィッ!」
のけぞり尻もちをついた。
まずい。
九木は殺した今でも天狗を憎んでいるのか。