不滅の妖怪を御存じ?






「そう思うんだったら、忘れないでいてやれ」


有明はそう言って、足元から何かを取り出した。
桐の箱と、口を閉じた貝。


「何これ」

「箱は弓月からだ。中身はだいぶ壊れてるけど、売ればかなりの金になるだろ」

「弓月」


箱を持ってみれば、ガランと中で鈍い音がする。

結局、藍は弓月の死体は見つけられなかった。
千秋も有明も弓月については何も言わない。
何も言わないということは、つまり、そういうことなのだろう。


「あと、これは」

「玉手箱か」


有明が言う前に、藍の手に落とされた貝を見て千秋が呟いた。

玉手箱。
白く、ほのかに反射する貝。

ここに、藍の6550万年分の時間が入ってる。


「慎重に扱えよ。開いても死ぬし、割ったり壊したりしても死ぬからな」


有明の注意に藍は貝をじっと見る。
つまり、この貝は。






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