不滅の妖怪を御存じ?
「安楽死か」
「は?」
「死にたくなったら、この貝を割るよ」
藍がそう言えば、有明は目を瞬いた。
千秋は表情一つ変えずに話に乗る。
「じゃあ、その貝割る時は僕が割ってあげるよ」
「なんで」
「勝手に死なれちゃ困るし」
「えぇ……」
言い合う藍と千秋に、有明はげんなりした顔をした。
そうして腰を上げ、藍の方へ顔を近づける。
耳かせ、と手招きされたのでおとなしく近づけば、「伊勢家の男って回りくどいのな」と言われた。
千秋に有明の声は聞こえないのだからヒソヒソ話す必要もないと思ったのだが、気分の問題だろう。
夕方五時頃になれば、「会いたい奴がいる」という理由で有明は川へ出かけていった。
赤い西日が有明の髪を照らす。
茶髪も綺麗なものだな、と藍は思った。