不滅の妖怪を御存じ?
どんどん妖怪たちの怒りが溜まっていくのが分かる。
弓月も顔を真っ赤にして藍を睨みつけている。
客に睨まれることなんて日常茶飯事だったが、弓月に睨まれるなんて滅多にない。
藍は少しビクッとしてしまう。
「くそ、契約さえなけりゃ今ここで殺してやるのに。」
「契約?」
太った河童の言葉に反応して藍は言葉を返した。
河童は再び怒鳴ろうと胸を逸らす。
だが、その後の言葉は続かなかった。
バゴォォォンッ、と。
150年の月日によりボロボロだった風呂場の壁に、でかい穴があいた。
瓦礫がたくさん飛んできて、藍は尻もちをつく。
たくさんの埃や崩壊した壁が空中を舞い、ケホケホ咳き込む。
そして、空気を切り裂くような鋭い声が飛んできた。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!」
凛とした男の声だった。
あ、これ聞いたことあるな、と藍は思った。
何か怨霊退治のアニメかドラマで変な服着た人が唱えた呪文だ。
バラバラと、全身に白い砂のようなものが降ってきた。
もしかして、そう思って舐めてみると、しょっぱかった。
塩だ。
お清めの塩。
これも何かで見たドラマかアニメそのままだ。