不滅の妖怪を御存じ?





藍は比較的大きな鞄を持ちとりあえず服を入れた。
財布。
通帳。

そこで藍は立ち止まる。
あとは何を入れればいいのだろう。

鞄はまだ3分の1ほど空きがある。
大事なものと言われても。

いざそう言われると思いつかないものだ。
もう一度部屋の中を見回す。

改めて見てみると、藍の家には物が少なかった。
生活に必要なものしかない。
かろうじてテレビはあるが。

そういえば、弓月はものが増えることを良しとしなかった。

電化製品も嫌い。
本さえも買うのを嫌がっていた。
近くに図書館があったので藍は特段困りはしなかったが。


「終わった?」


後ろからの声に振り返れば、男が勝手に部屋に入ってきていた。
近くで見ると、男は昨日とは服の色が変わっていた。
白い着物に紺色の袴。
一目では昨日とたいして変わってないように見える色だ。


「やけに少ないね。」

藍の荷物を見て男は一言。
さらに部屋を見回してもう一言。


「何もないね、この部屋。」

ハ、と男が漏らした笑い。

確かに何もないよなぁ、と藍は思った。




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