不滅の妖怪を御存じ?
「弓月が物増やすの嫌いだったから。」
「弓月?」
「私を育ててくれた人。あ、いや、妖怪だ。」
「……ふぅん。」
今にして思えば、弓月は何かを恐れていたように思える。
藍が着なくなった服はすぐに燃やした。
使わなくなった教科書も。
ランドセルも。
藍が使ったものを、弓月は一つ残らず燃やしていった。
写真さえも燃やした。
庭で黙々とものを燃やしていた弓月の背中を思い出す。
ピリピリしたその雰囲気に、藍はいつも近づけなかった。
「車が来たみたい。行くよ。」
男の言葉に藍は荷物を持つ。
そして、やけに堂々としている男の背中に声をかける。
「ねぇ。」
「なに?」
男は振り返ることも足を止めることもしなかった。