不滅の妖怪を御存じ?
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昔、絵仏師良秀という人がいたそうだ。
芥川龍之介の小説にもあったと思うが。
自分の家が燃えているというのに「これで本物そっくりな炎が描ける!」と喜んでいたそうな。
絵にのめり込みすぎて、普通の人々には理解できないような思考になってしまったのだろう。
芸術家とは、得てしてそういうものなのだろうか。
さて、それは置いておいて。
昔、ある一枚の絵に魅せられた男がいた。
その絵とは、金色の背景に一輪の桔梗が咲いている絵だ。
儚くも美しいその絵を見た瞬間、男は躊躇いもせずその絵を買った。
それから男は喜々として家に帰り、その絵を大切にした。
毎日その絵を眺めては一人満足していた。
朝起きてその絵を真っ先に見、「美しい」と零す。
夜寝る前にその絵を見て穏やかな気持ちになり、床に就く。
そんな日々の中で男はある決意をした。
この絵は何があっても傷つけないようにしよう。
例え自分が命を落とすことなっても、この絵は守ろう、と。
そうして何年か過ぎ、その日はやってきた。