不滅の妖怪を御存じ?
「今回藍ちゃんを呼んだのはね、話を聞きたかったから。」
「話?」
「九木の妖力補充の土地を壊したんでしょ?大騒ぎになってるもん。」
九木。
どこかで聞いたことがあるが思い出せず藍は首をかしげる。
しかしすぐに思い当たる節があった。
風呂だ、弓月たちが話していた。
つまり九木の妖力補充の土地というのは風呂のことで、そこにスライムを放り込んだことを言っているのだろうか。
竹内天音にもそのことでお礼を言われたが、それほどのことなのだろうか。
「あの辺りは九木の部下の妖怪が多くてなかなか手を出せなかったの。本当に、どうやって壊したの?」
純粋に問いかけてくる佳那子に藍は何とも言えずニヘラ、と笑った。
スライムなんて言ったらきっとがっかりするよなぁ。
言わない方がいいだろうな。
下を向いて足元に集中しているフリをする。
「多分今日は全員集まっているんじゃないかな。藍ちゃん英雄だもん。」
「へ、なんで?」
藍が不思議そうな声を出せば佳那子は驚いたように振り返る。
「当たり前じゃん!人間側が九木にまともに攻撃できたのなんか今回が初めてなんだよ!」
だから九木って誰なの、とか攻撃って言ってもスライム落としただけだ、とか色々言いたいことはあった。
だが、その前に佳那子が言った「英雄」という言葉が引っかかった。
嫌な予感がする。
藍は唇を噛み、どうか良い方向にいってくれ、と心の中で呟いた。
残念なことに、状況は良い方向には転がらなかったが。