不滅の妖怪を御存じ?





「ごめん藍ちゃん!私行かなきゃ!」

ぺこりとお辞儀すると佳那子は三つ編みの子に手を引かれ行ってしまう。
ぼんやりと行ってしまう二人の背中を見ていたら、残った二人が藍に話しかけてきた。


「よく平気な顔でいられますね。」

橙色の着物を着た子が目を細めてそう言った。
藍が顔を上げればもう一人も話しかけてくる。



「掃除係の分際で佳那子さんに話しかけないでもらえますか?」


髪をお団子にまとめた女の子がそう言って身を乗り出す。
藍はそれを無表情に見つめながらも、内心はドキドキバクバクでテンパっていた。
今まで変人と呼ばれる遠巻きにされてきたことはあったが、ここまで真正面に詰め寄られたのは今回が初めてだ。
何も言わない藍に苛立ったのか、グイッと肩を押してきた。
ガッと背中が壁にぶつかり、思わず顔をしかめる。


「妖怪が見れるなんて気を惹いて、頭おかしいんじゃない?」

追い打ちをかけるように言われる。
ここまで妖怪が見えるのはおかしいと言われると自分でも不安になってくる。
もしかしたらあの日弓月たちは妖怪変装パーティでもやっていたのかもしれない。
そんな考えまで浮かんでくる。

いつまでも黙っている藍に業を煮やした女の子がもう片方の手で藍を押そうとするのと、しゃんとした声が響くのは同時だった。


「何をしているの?」

その声に、女の子たちは一瞬で顔を青くした。
パッと手を離す。

藍はその勢いのままに壁にもたれかかる。




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