不滅の妖怪を御存じ?




「もうすぐ授業が始まりますよ。」


しゃんとした声がまた聞こえると、女の子たちはダッと駆け出してしまった。

そしてようやく視界が開け、声の主が見えた。
立っていたのは西文紫月。


「助けてくれてありがとう。変な敬語、今日は使わないの?」

「普段から敬語使う人いないでしょう。」

しゃんとした落ち着いている声。
おかっぱ頭。
紫月はふっと手を上げ廊下の奥を示した。


「電話がきてます。」

「……私に?」

「はい。竹内蛍さんから。」

久しぶりにその名前を聞いた気がした。
強制的に竹内天音に連れていかれた竹内蛍の背中を思い出す。


「ただ、竹内家は鬼道学園とは敵対関係であるので、会話の内容はこちらでも聞かせてもらいます。」

「あ、うん。」

竹内蛍との会話なんてほぼ8割が宇宙についての蛍の一人語りになるのだから聞かれても構わないだろう。

よっ、と立ち上がった藍の隣に紫月はスッと寄ってきてこう囁いた。


「昨日の私の敬語、変でしたか?」

最高に丁寧な言葉遣いにしたつもりだったんですけど、と紫月が呟いたのを聞いて、藍は思わず吹き出した。



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