【短編】唇を近づけて
唇を近づけて



「…近藤くん」



「んー?」



「もう、下校時刻過ぎてる…」



「うん」




近藤くんの栗色の髪が、窓から入ってきた風でフワリと揺れる。




さっきまでグラウンドから聞こえていた野球部の掛け声もいつの間にか止み、静まりかえった教室の中は。



あたしと近藤くんの、二人きり。




「あとはあたし一人でやるから、もう帰っても大丈夫だよ」




遠慮がちにそう言っても、近藤くんが手を止める気配はない。



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