【短編】唇を近づけて



「明日?…うん、いや大丈夫だよ」




知っていた。



近藤くんに、彼女がいることくらい。




「うん、うん、分かった」




電話越しに彼女と話す近藤くんの顔は、本当に幸せそうで。



こんな顔、あたしには向けてくれたことないなぁなんて冷静に思った。




「…ごめん、なんか言おうとしたよな?」




電話を切って、再びあたしに微笑みかける近藤くんを。



あたしだけのものにしたくて。



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