【短編】唇を近づけて
自分が損な性格だということくらい、小さい頃から自覚している。
頼まれると断れないし、酷いことをされても怒れない。
そのせいで、中学ではいじめられた。
「こいつ何でも従うよ〜」なんて笑われて、いわゆるパシリとして扱われて。
でも、誰も助けてなんてくれなかった。
先生は、見て見ぬふりをして。
クラスメイトは、いじられキャラだなんて勝手な位置づけをして。
親友でさえ、さりげなくあたしと距離を置いて。
家族になんか、相談できるわけなくて。
あたしは、ずっと孤独だった。