【短編】唇を近づけて
あたしは、そんな近藤くんをまんまと好きになって。
でも、告白なんて絶対できるわけなくて。
いつだって気づいたら近藤くんを目で追っている自分がいるし、近藤くんが他の女子と楽しそうに話しているのを見ると胸がチクリと痛む。
できることなら、この気持ちを恋だと気づきたくなかった。
希望がないことも傷つくことも分かりきっている恋なんて、するだけ無駄なのに。
それなのに、そんなあたしの理性なんか無視して気持ちはどんどん膨らむばかりで。
「手、止まってる」
「…え?あ、ごめん」
「ばーか」