あくまでも骨董屋です。
ふっと強い風が吹いた。
それまで無風だったのに、突然吹いた強風に一瞬だけ気を取られ、視界が戻った時には、男はまた忽然と消えていた。
何が、どうなっているんだろう……。
不審者として、警察に通報でもしておいた方が良いかもしれない。
そんなことを思いながらも、面倒臭いという気持ちの方が勝った。
あの不思議な男のことは、頭の片隅にこびりついて、離れることはなかった。
そして、翌月。
主任は地方に転勤になった。
そして、その転勤先で奥さんが交通事故に遭い、お腹の子供と共に亡くなったという。
更に、主任は奥さんとは別に水商売の女に入れ込んで会社の金を使い込み、それが露見して、クビになったそうだ。
それ以降、あの男がどうなったかは、知らない。