anjel






私がそう言うと、先輩はもう一度笑って屋上から出ていった。


『バタン』とドアが閉まる音が聞こえると、私はその場に座り込んだ。


ドキドキする胸に、手をあてる。


…なに、今の。


「綺麗」って、初めて言われた。


だからかな?


だから、こんなに胸がドキドキするのかな……


先輩の真っ直ぐな瞳と、『綺麗』という言葉が頭の中から離れなくて。


歌を聞かれたことなんか、すっかり頭から抜けていた。


そうして昼休み終わりのチャイムが鳴るまで、そして鳴ってからも、私は一歩も動けなかった。





 
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