anjel







「それで、色々考えるうちに気づいたんです。

 私の歌を聴いたから、両親は事故で死んだんじゃないかって……」


両親を想って歌ったのに、それで両親を死なせてしまった。


私は、歌手になる資格なんてない。


歌う資格だって………


そう思った私は、歌うことから手をひいた。


学校で強いられたときだけ適当に歌い、


その他では一切歌わないと誓った。


もう、これ以上、不幸になる人を出したくない。


私は歌ってはいけなかったんだ。


調子に乗って歌手なんかになろうとするから、


バチが当たったんだ。


「それから高校入るまで、まったく歌わなかったんですけど、

 あの屋上に入ったときになんだか無意識に歌ってしまったんです。」


上へと続く長い階段、扉。


まるで、天国への入り口のよう。


そこに行けば、お父さんとお母さんに会えるような気がして。


気づけばそこに通っていた。


2人に向けて歌うようになったのは、2年に入ってからなんだけどね。







 
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