anjel
だから、自分が何をしたいのかまったく分からない。
小さいころの夢……歌手になることは、
もう、諦めている。
人前で歌うことの抵抗は、みっくん先輩のおかげでなくなったけど、
叶えようとは思わない。
今さら…な気がする。
「幸望はもう志望校決めた?」
「ううん…全然。朱里は?」
「私は決めてるよ。医者になりたいんだ」
医者…?朱里が?
「私の弟……小さいころに病気になってね、
治らないかもしれないって言われてたの。
でも、お医者さんのおかげで治って……
それで、私もそんな医者になりたいって思ったの」
ふわり、と微笑む朱里。
明確な理由。その夢に対する希望。
うらやましい。
本気でそう思った。