anjel
「どうして……?」
聞こえないくらい、小さな声で呟いたのに、
「当たり前でしょ?」
と、みっくんが答える。
「大切な俺らのボーカルを、こんな真夜中に1人っきりにさせられないよ」
また、泣いてるんじゃないかと思ったしね。
そう言ったみっくんを見つめると、
いつもの優しい笑顔を見せてくれる。
「幸望りん!!」
「ったく……瑞希はえーよ………」
「…幸望、荷物かせ。」
強引に私の手からバッグをとる翔。
「あ、すみません…」
「…こんな荷物持って走るとはな」
「無我夢中でしたから…」
「…ったく」
うちのボーカルは困ったやつだ、なんて
翔が笑う。
レアな翔の笑顔に思わず見惚れる。
「あ、幸望りん、今日どうするの?」
亮くんに言われ、我に返る。
「…あ………」
どうしよ……
先輩たちに会えてホッとして、忘れてた……
「まさか、ノープランか?」
奏ちゃんの言葉に、首を縦に振る。
「はぁ……」
呆れた奏ちゃんのため息。
「ど、どうしよ…」
朱里の家は無理だし、家には帰れないし…