anjel
「っ!?」
ドアの開く音と、久しぶりに聞く声。
「帰ってたのか…?」
「…うん。荷物、取りに」
ドクン。ドクン。
「…そっか。」
「うん……」
鳴り止まない、心臓。
息苦しい。
怖くて、後ろを見れない。
「…あのさ」
そう言った翔輝の腕が、私の肩に触れる。
「話がある……」
後ろに引っ張られて、抱きしめられる。
「幸望、俺………」
耳元で聞こえる、翔輝の小さな声。
私はただ、怖くて動けない。
今から、なに言われる?
また、怒られる?
それとも……叩かれる?
「っ。」
やだ。怖い。
お願い、離して。
「しょう、き……」
「ごめん。この前は、言い過ぎた。幸望の気持ち考えずに、言いたいこと言ってた。」
予想していたものとは全く違う、
翔輝からの謝罪の言葉。
「…でも、あの日は、帰って来るの遅すぎだ。連絡もしなかったし…。俺がどれだけ心配したと思ってる?メール返さねえし、電話も出ねえし……。おまけに先輩たちに送ってもらってるし…。先輩たちに送ってもらうくらいなら、俺を呼べよ」
…ああ、結局、こう。
私が、悪いの。
連絡もせず打ち上げに行き、
メール返さず電話も出ず、
先輩たちに家まで送ってもらった、
私が悪いの。