anjel








「じゃあ、行きますか!」


亮くんの号令に、みんなが荷物を運び出す。


機材や楽器をワンボックスカーに積む。


「…誰がこの車運転するんですか?」


積み終えて休憩している先輩たちに聞く。


「幸望りん、俺らみんな免許持ってるよ?」


「もう19だしね」


亮くんと奏ちゃんの言葉に、忘れかけていた年の差を感じる。


私より、一つ年上。


それだけで、出来ることがこんなに違うんだ。


「それより、荷物積んだおかげで3人しか乗れないけどどうするの?」


みっくんのセリフにみんなが「あっ」と言う。


「…わ、私、歩きます!!」


「いや、幸望ちゃんだけ歩いてもあと一人乗れないからね?」


「あ、そっか… 」


どうしようかと、悩んでいると。


「…俺の後ろに幸望乗せていくわ」


…うしろ?


「ああ!それいいね!」


「その方が早いもんね〜!」


「じゃあ俺と亮二と奏多は車で行こうか」


「んじゃ、俺が運転しますか」


「奏多よろしく〜♪」


3人で、さっさと話を進めてしまう。


…ようするに、私は翔のバイクの後ろに乗せてもらうってこと?


「えぇ!?わ、私それなら歩いて…」


「…いいから乗れ」


翔はそう言って断る私に近づくと。


「キャア!?」


私を抱き上げて、無理矢理バイクの後ろに乗せた。


「…ほら、ヘルメットつけろ」


「あ、はい……」


ポンっと渡されるヘルメットを渋々つける。


「じゃ、幸望りん後でね〜♪」


「あ、はい…」


「…俺らも行くぞ」


つかまれ、と翔に言われ服の裾をつかむ。


バイクの後ろに乗るなんて初めてだよ…


ジェットコースターそんなに得意じゃないけど、大丈夫かな。


「…もっとつかまれ。」


翔が私の両手を掴み、自分の腰にまわす。


「翔!?」


「…なんだよ。落ちたら困るだろ」


翔はほら、いくぞ、と言うと、エンジンをかけてバイクを走らせた。








< 531 / 600 >

この作品をシェア

pagetop