anjel
「じゃあ、行きますか!」
亮くんの号令に、みんなが荷物を運び出す。
機材や楽器をワンボックスカーに積む。
「…誰がこの車運転するんですか?」
積み終えて休憩している先輩たちに聞く。
「幸望りん、俺らみんな免許持ってるよ?」
「もう19だしね」
亮くんと奏ちゃんの言葉に、忘れかけていた年の差を感じる。
私より、一つ年上。
それだけで、出来ることがこんなに違うんだ。
「それより、荷物積んだおかげで3人しか乗れないけどどうするの?」
みっくんのセリフにみんなが「あっ」と言う。
「…わ、私、歩きます!!」
「いや、幸望ちゃんだけ歩いてもあと一人乗れないからね?」
「あ、そっか… 」
どうしようかと、悩んでいると。
「…俺の後ろに幸望乗せていくわ」
…うしろ?
「ああ!それいいね!」
「その方が早いもんね〜!」
「じゃあ俺と亮二と奏多は車で行こうか」
「んじゃ、俺が運転しますか」
「奏多よろしく〜♪」
3人で、さっさと話を進めてしまう。
…ようするに、私は翔のバイクの後ろに乗せてもらうってこと?
「えぇ!?わ、私それなら歩いて…」
「…いいから乗れ」
翔はそう言って断る私に近づくと。
「キャア!?」
私を抱き上げて、無理矢理バイクの後ろに乗せた。
「…ほら、ヘルメットつけろ」
「あ、はい……」
ポンっと渡されるヘルメットを渋々つける。
「じゃ、幸望りん後でね〜♪」
「あ、はい…」
「…俺らも行くぞ」
つかまれ、と翔に言われ服の裾をつかむ。
バイクの後ろに乗るなんて初めてだよ…
ジェットコースターそんなに得意じゃないけど、大丈夫かな。
「…もっとつかまれ。」
翔が私の両手を掴み、自分の腰にまわす。
「翔!?」
「…なんだよ。落ちたら困るだろ」
翔はほら、いくぞ、と言うと、エンジンをかけてバイクを走らせた。