anjel
最寄り駅に着いたときには、もう6時半だった。
「翔の後ろどうだった?」
怖かっただろ?と奏ちゃんに聞かれる。
「そんなことなかったですよ?」
最初はちょっと怖かったけど、
翔にしがみついていたら全然怖くなくなった。
「マジで!?俺が後ろ乗ったとき超ハイスピードで怖かったんだけど!!」
「…亮二黙れ」
「あ、幸望ちゃんだから安全運転したんだ。」
「…違う」
「照れるなって〜♪」
「亮二黙れ」
「また俺だけ!?」
よく分からない言い合いをする3人。
相変わらずだけど、和むなあ〜…
って。
「先輩たち!後30分もありませんよ!早く用意しましょう!!」
私はそう言って、車から荷物を降ろしているみっくんを手伝う。
「みっくんすみません」
「大丈夫!あ、それ重たいからこっち持って」
「はい!」
優しいなあ。
そうしているうちに後の3人も来て、
ものの10分で用意ができた。
それから音がちゃんと出るか確認して、
曲順の確認をする。
長い時間ライブしていたら、通行の邪魔になるし迷惑なので、
予定では45分。
もしかしたら、もう少し短くなるかも。
亮くんの話にうなづきながら、
速くなる鼓動を抑える。
「みんな、落ち着こう」
「…そうだ。瑞希の言う通りだ。」
深呼吸。深呼吸。
大丈夫。
落ち着いたら、出来る。
いつも通りに歌うだけ。
聞いている人に、届けるように。
「よし、それじゃあいくぞ!!」
「「「「おー!!」」」」
真ん中に出して重ねた右手を上にあげる。
そして、自分の立ち位置に着いた。