anjel
「……」
違和感に耐え切れず、途中で歌うのをやめる。
「幸望りん?」
「幸望ちゃん?どうした?」
「…幸望?」
不思議そうな先輩たち。
「なにか、ありましたか?」
先輩たちの方に振り向いてそう尋ねる。
「え?」
「今の演奏…"心ここに在らず"って感じでした」
私の言葉に、少し方を震わす奏ちゃん。
「1人なら、特に気にならないんですが、3人ともなので……」
1人なら、その日の気分があるから、
そんなに気にならない。
だって、私もそういう日があるから。
でも、3人一気にってなると、すごく気になってしまう。
「どうかしたんですか…?」
先輩、目をそらさないで。
そんな態度されたら、何かあったんだって思っちゃうじゃない。
何があったの?
3人とも知ってるの?
みっくんは?
私だけ、知らないの?
「…幸望は知らなくていい」
翔の言葉に、世界がグラリと揺れる。
…私だけ、知らないんだ。
「翔、その言い方は……」
「もういいです」
奏ちゃんの言葉を遮るように、拒絶を示す。
「…もう、いい。」
耐え切れなくて、ライブハウスを飛び出した。
「幸望りん!!」
「幸望ちゃん!」
亮くんと奏ちゃんの呼び止める声が聞こえたけど、
振り向かずに家に帰った。