anjel
「しょ、翔輝!私たち……」
「"別れたからこんなことしちゃダメ"って言いたいわけ?」
「……だって…そう、でしょ?」
私の言葉にため息をつく。
「別れて、兄妹になったんじゃねーの?」
「……"兄妹"?」
「そ。泣いてるカワイイ妹を、慰めてる兄。…これでもダメ?」
…そんなの。
「ダメ…じゃ、ない……」
ダメじゃない。
この暖かい腕は、妹想いのお兄ちゃんの証拠。
そう思ったら、また涙が出て来た。
「ん。じゃあ、早く泣き止め」
「…も、泣いてないもん」
私の言葉に、「嘘つけ」なんて笑う翔輝。
…久しぶりだなあ。
「翔輝、久しぶり…だね」
「だな。塾行くからメシ食う時も別だし…」
毎日朝から夜まで塾に通ってる翔輝は、
おじさんの後をついで建築家になるために頑張ってる。
「うん……」
「寂しかった?」
そう聞かれ、素直に頷く。
そりゃ、寂しいよ。
おんなじ家に住んでるのに、全然会えないんだもん。
「…珍しく素直だな。」
「いつも素直だよ」
翔輝の腕から顔を出し、笑ってみせる。
「…どうした?」
もう一度、そう聞かれ、私はさっき起こったことを話した。