anjel
今年で24になる俺たちは、
それぞれ別の音楽制作会社に勤めている。
働かなければならないことになって、
大学も出ていない俺らに就職先を探すことは、
とてつもなく困難なことだった。
でも、自身で書いた詩や作った曲を持ち込んで
なんとか就職することができた。
今では作詞作曲はほとんどしてないけどな。
翔は真面目だから、会社でも評判がいいらしい。
バンドをしていた時と違い、
自分で詩を書くようにもなった。
その詩がある有名な歌手の目に止まり、
翔はその歌手の専属ライターとなった。
奏多はわりとフリーな会社に就職。
もともと頭がいいから、何でも要領よくこなしているらしい。
奏多は作詞よりも作曲がメイン。
上司が知り合いらしく、けっこう自由にしているんだとか。
俺は自分で作った曲を持ち込んで就職さしてもらったが、
今はバリバリの営業マン!みたいな仕事をしている。
もちろん、音楽制作にも携わったりするけど、
外歩き回って取引先に挨拶したりしている方が多い。
上司曰く、俺は挨拶まわりに適した性格らしい。
いつも馬鹿にされるこのおちゃらけた性格が
こうやって役に立つというのは、なんとも嬉しいことだ。
「…しかし、5年もたつのか」
ビールをくいっと飲みながら、しみじみと呟く翔。
そうだな〜、なんて言いながら、
俺もビールを飲んだ。