anjel
番組も後半に差し掛かり、序盤で話していた歌手の話題となる。
『さて、それではご登場いただきましょう!みなさん、必見ですよ〜』
『この方です!!』
バンっとスポットライトが彼女の方にあたり、
赤、青、黄色、カラフルな色が彼女を照らす。
久しぶりに見る彼女の姿に、
思わず息が漏れる。
「…大人になったな」
翔の言葉に、俺と奏多は頷いた。
髪も伸び、茶色に染め、軽くウェーブがかかっている。
白く、フワッとしたドレスが強調する彼女の華奢な体は変わらないけど、
どこかふわふわしていた雰囲気はなくなり、
大人っぽい雰囲気が漂っている。
俺の知らない人みたいで、少し寂しくなった。
『それでは、自己紹介お願いします!』
『みなさんこんばんわ、初めまして。バンド"anjel"のボーカル、幸望です』
わー!っと大きな拍手がテレビから聞こえてくる。
バンド"anjel"、という言葉が懐かしい。
彼女は今でも、そのボーカルとして活動しているのだ。
『いくつか質問させてくださいね』
『はい、どうぞ』
『なぜ、バンドのボーカルなのに、お一人で活動されてるんですか?』
司会者の無神経な質問に、
俺はもちろん翔と奏多は眉間にしわを寄せる。