悪魔の微笑み
やっぱり、人間の世界には、天使に関する資料なんてないらしい。
悪魔同様、天使にも厳しい掟があるのかもしれない。
なんとかその掟を破らせれば……
そう思っていたのだ。
「玲!」
不意に名前を呼ばれ、びくりと飛び上がった。
手に抱えた本が、ばらばらと崩れ落ちた。
奴のことばかり考えていた。
追ってきたらどうしようなんて思った。
だから、名前を呼ばれた瞬間、魔力すら使いそうになった。
だけど、あたしを呼んだのは……
「正樹君……」
だったのだ。