悪魔の微笑み




廊下を走り、裏庭へ出る。

そして、裏庭を突っ切って校門から外へ出ようと企んだ。

心臓がドキドキ音を立て、汗が背中を伝う。




今日一日、すごく長かった。

これ以上、何もありませんように……。








そんな時、足元に違和感を感じる。

弱くて儚い何の気配がした。

ふと止まり、足元に視線を落とす。

すると、すぐ近くの草むらの上に、血まみれの鳥の雛が倒れていた。




身体を震わせ、声を振り絞り、懸命に声を出そうとする。

それでも力が入らず、掠れた声が出るだけ。




上を見上げると、高く聳え立った木の上には鳥の巣があって、おそらくそこから落ちたのだと推測出来る。

巣には他の雛がいて、餌を持って飛んでくる親鳥に向かって一斉に口を開けた。




誰一人、この傷ついた雛に気付いていない。







「死んでしまう」




あたしは呟いていた。




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