悪魔の微笑み




「だめ……あたしには……」




必死で拒否するが、




「お前が言い出したんだろが」




強引な輝。

半ば強制的に手を掴まれ、雛を手渡された。






「だめだよ……

あたしじゃ……」




震えるあたしの手。

これ以上雛に触れてはいけない。

今にも雛を投げ出してしまいそう。





なのに……






「自分を信じろ」




輝はそう言ってあたしから手を離す。




「思い込みっつうモンもあるんだぜ?」



「え……」






慌てて雛に目を落とす。





あたしが持っているのに……

あたしの手の中にいるのに……

雛は元気に歌っていて。





「良かった……」




流れそうになる涙をぐっとこらえた。





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