悪魔の微笑み
だが……
「お前が馬鹿をしなかったら問題ねぇ」
自信満々にそう言う輝。
その間にも生徒とすれ違うが、明らかに怪しいあたしたちを見ても何も言わなかった。
ふと、向こうから見慣れた生徒が歩いてくることに気付く。
黒い髪に、優しげな顔。
背はすっと高い。
正樹君だ。
あたしは慌てて身を引いた。
こんな場面、正樹君に見られたくなかったのだ。
だが……
「先生、さようなら」
正樹君は輝にだけそう告げて、何事もなかったかのようにすれ違う。
「正樹君!?」
思わず叫びそうになったあたしの口を、輝がぐっと塞いだ。