悪魔の微笑み




あたしは、再び男に目を向ける。




茶色いさらさらの髪は、少し襟足が長い。

前髪からは整った眉が見え、その瞳は二重で切れ長。

すっと形のいい鼻に、下唇が集めの唇。



輝もかなりのイケメン。

だが、この男も輝に負けず劣らずのイケメンだった。

輝がヤンチャイケメンなら、彼は正統派イケメンといったところか。






「彼女は?」




男はあたしを見たあと輝に聞く。

輝、どうやって答えるのだろう。

何だかドキドキしてしまうあたし。



だが……





「連れ」




素っ気ない答えを返した。




その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと絞られる。




分かっている。

あたしと輝は、何の感情もない関係だと。

連れという言葉がぴったりだ。




だけど……

この胸の痛みは何だろう。






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