悪魔の微笑み
転校しても、きっと何も変わらない。
輝はまたあたしを求めてそこへ来る。
……そう、あたしではなく、アキを求めて。
それに、正樹君や有希をはじめ、大切な友達もたくさんいるのだ。
「今のまま頑張る」
そう言うと、お兄ちゃんはさらにあたしを強く抱きしめてくれた。
そんなあたしの頭の中に浮かんだこと。
輝から逃げる唯一の方法。
あたしは、その行動を取ったら開放される。
「輝に抱かれる」
「え……」
お兄ちゃんの身体が強張った。
「あたしが輝に抱かれれば、あいつは消えてしまう」
それは、輝も望んでいること。
輝はずっと抱かせろとあたしに言ってきた。
何が何だか分からないけど、それで報われるならいいじゃん。
いいと思うのに。
輝なんて消えてしまえと思うのに。
なのに、どうしてこんなに心が痛いのだろう。
あたしは……
どうしてしまったの?