悪魔の微笑み



「聖さんは、この仕事をしてもう長いのですか?」




沈黙が気まずくて、前にいる聖さんに声をかける。

こんなあたしの質問にもちゃんと答えてくれる聖さん。




「いや……二十年くらい」



「に……二十年!?」




思わず声に出してしまったあたし。



聖さんは見たところ、輝の少し歳上。

恐らく、二十代前半だろう。

そんな聖さんが二十年もこの仕事をしているなんて言ったら……





「俺は、人よりも歳を取るのが遅いから」




そう言って笑う聖さん。

そんな聖さんの言葉を聞いて、はっと我に返った。




聖さんは天使だ。

よく考えればあたしも、人間界へ来て三年目。

ほとんど歳を取っていないように見える。

周りはどんどん成長するのに。



有希はいつの間にか胸が出て、女性らしい体つきになっている。

正樹君の背はどんどん伸びている。



なのにあたしは……



いや、あたしは、はじめから高校三年生くらいの体つきだったのだ。




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