悪魔の微笑み




「こっちの世界は、時間が経つのが速い。

自分以外のものが、すごい速さで変わっていく。

時々切なくなるよな」




聖さんはそう言って上を向いた。





「だけど、自分で決めた道だから」



「え……?」



「俺は、この世界が好きだ。

だから、この世界で生きていくことに決めた」





あたしは聖さんをぼーっと見つめていた。

その顔は、相変わらず中性的でかっこいい。




聖さんは、あたしみたいに訳があって人間界にいるわけではないんだ。

自ら進んでここにいる。

だから、敢えて悪魔のあたしにも何もしないのかもしれない。




……どうしてそんなに人間界にこだわるのだろう。





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