悪魔の微笑み
甘い時間と苦い心
クラブの扉から外へ出る。
夜の涼しい風があたしの身体を縫って駆け抜けた。
濡れたスカートが足に張り付き、寒気が身体を這い上がる。
肩を押さえ震えるあたし。
身も心も凍りついている。
そんなあたしの肩に……
ぱさっ……
暖かいものが被さった。
「え……」
思わず声に出してしまう。
それは黒っぽい色で、少し重くて、何だかいい香りがして。
「風邪引くだろ」
あたしが風邪なんて引くはずもないのに、奴はそんなことを言って。
自分は寒いのに、あたしにジャケットをかけてくれた。
胸がずきんと痛む。
何が悲しいかも分からないのに、涙が出そうになる。
あたし、どうしてしまったの!?