悪魔の微笑み
「玲……」
怯えるあたしの耳に、お兄ちゃんの優しい声が聞こえてきた。
何だか心地よい音楽みたい。
修行を終えて一人前になったお兄ちゃん。
今はただ、あたしを見守るためにここにいる。
悪魔の声は人を惑わせ、その微笑みは人を狂わせる。
一人前のお兄ちゃんにはそんな力があるのだろう。
不安は消えないが、お兄ちゃんのおかげで恐怖が少し和らいだ気がする。
「玲。
お前はここに来て、人間の深みに嵌ってしまったみたいだ」
お兄ちゃんは切なげにあたしに告げる。
「お前は人間ではない。
……よく肝に銘じておけ」