悪魔の微笑み
あんなに嫌な奴なのに。
なのにキスはひどく優しい。
ガラスにでも触れるようにあたしに触れ、蜜を舐めるようにあたしの唇を吸う。
身体に強い電流が流れ、熱を持つ。
「感じてんのか?」
耳元で囁かれ、びくんと身体を反らす。
甘くて、耳元からとけてしまいそう。
あたしはもう、輝のいいなりだ。
だけど……
頭に浮かんだあの名前。
「アキ」……。
輝はあたしにアキを重ねている。
どういう訳か知らないが、悪魔のあたしアキを重ねているんだ。
そう思うと胸が苦しくて切なくて。
輝の背中をぎゅっと掴んでいた。