悪魔の微笑み
「何泣いてんだ?」
輝の声は憎いまでに落ち着いている。
その低く静かな声が、ずしんと心に響く。
「だって……」
言葉が見つからない。
何て言ったらいいのか分からない。
そんなあたしの頭を、輝は優しく撫でてくれる。
どうしてあなたはそんなに優しいの?
いつもはあんなに酷い男なのに。
「そんなんだからいけないんだ」
あたしの声は震えていた。
最後の力を振り絞って、声を発した。
「そんなに優しいから……あたし……」
輝がぎゅっとあたしを抱きしめる。
この醜い姿をしたあたしを見て、顔を背けることもせず、全てを受け入れてくれる。
「あんたなんか嫌いなのに……」
新しい雫が頬を伝う。
あんたなんか嫌いなのに……
好きになっちゃうよ。