悪魔の微笑み
有希も正樹君も欺いているあたしは、正真正銘の悪魔だ。
姿だけでなく、性格までえげつない。
自己嫌悪に陥っているあたしの耳に、新しい声が聞こえた。
昨日も嫌と言うほど聞いたその声。
いつもは狂気に満ちているとさえ思えるその声。
だけど、学校での作り物の声は全く違う。
穏やかで、真面目で、理想の先生の声だ。
「引率みたいなものだからね。
森野さんはストーカーに狙われているみたいだし」
「はぁぁぁぁ!?」
思わず大声を上げていた。
お前だよ、お・ま・え。
だけどそんなこと言えるはずもなく、黙って俯くあたし。
クラスのみんながざわざわしてあたしを指さす中、あたしは真っ赤になって震えていた。
有希の馬鹿!!
ストーカーに、ストーカーの話をしちゃ駄目じゃん。
正樹君も正樹君で、
「白浜先生が一緒なら安心です」
なんて言う。
あたしは黙って頭に手を当てていた。
何だか波乱の予感がする。
あたし……
どうなってしまうの?