悪魔の微笑み




まずい!




あたしは、慌てて首を押さえていた。





そんなあたしの頭の中には、昨日の輝の甘い口づけが思い浮かぶ。



甘くて痺れて……

あんな気分になったのは初めてだ。





「む……虫に刺されて」




必死で言い訳を作るあたし。

輝のキスマークだなんて言えるわけもない。





「へぇ~。

そんな虫っているんだ」




わざとらしく輝が言う。

確信犯だ。





あたしは輝を睨み、前に向き直る。

もう相手なんてしてあげないという気持ちを身体全身で表現した。





やっぱり、輝の心はどす黒い。

だけど、そんな輝を見るだけで、そんな輝と話すだけでドキドキしてしまうあたしがいる。

あたしは……

完全に恋の病に侵されている。




< 209 / 307 >

この作品をシェア

pagetop