悪魔の微笑み
「森野さん」
輝が作り物の穏やかな声であたしを呼ぶ。
ビクっと飛び上がるあたし。
「森野さんだけ演習問題が出ていないけど」
「あ……」
しまった。
妄想をしていて、演習問題があったことなんて全く知らなかった。
さらに真っ赤になって俯くあたし。
クラスの注目を浴びて恥ずかしいし、何よりこれ以上輝に関わったらおかしくなりそう。
すぐにでも消えてしまいたい。
だけど、この後さらにあたしを地獄に落とす言葉が待ち構えていた。
「放課後、化学実験室まで持ってきてくれるかな?」
「えぇぇぇぇ!?」
思わず大声を出していた。