悪魔の微笑み
「ごめんなさい」
悪くないと思いながら、仕方なく謝るあたし。
ここにこれ以上二人でいるのは危険だから、一刻も早く帰りたい。
だけど、心の奥底では輝を求めているのかもしれない。
ちらっと輝を見上げる。
その瞳とあたしの瞳がぶつかった瞬間、再びあたしの身体は熱を持つ。
「誘ってんだろ」
口角を釣り上げて輝が言う。
「違っ……」
声を出そうとすると、あごをぐいっと掴まれた。
思わず身を引くが、輝は離してくれない。
間近で視線がぶつかり、顔から火を吹きそう。
輝は右手であたしの顎を掴んだまま、左手で眼鏡を外す。
レンズから解放されたその瞳は、あたしを捉えて離さない。
二重で切れ長の綺麗な形の瞳。
綺麗だが、危険な輝きを帯びているその瞳。
吸い込まれるように顔が近付き、唇が触れた。