悪魔の微笑み
「まぁいい」
輝はそう言って顔を背け、話を続けた。
「俺、性格悪ィだろ。
だけど、昔はそうでもなかった。
引っ込み思案で暗い男だった」
輝の口から聞く、意外な事実。
あたしはその事実に驚きを隠せない。
「暗くて何も言わねぇ俺を、クラスの奴は毎日からかった。
暗浜だとかいうあだ名まで付けられた。
いじめは日々エスカレートする。
陰口だったのが悪口になり、
黒板に書かれるようになり、
遂には机が無くなったり教科書を破かれたり。
それでも俺は何も言わなかった」
相変わらず淡々と話す輝だが、その言葉はあたしをぐいぐいと苦しめる。
こうやって平和に生活していることすら申し訳なく思えた。