悪魔の微笑み





有希はくるりと後ろを向く。

そして、何も言わずに駆け出した。





「有希!?」




正樹君はそう叫び、あたしを一睨みする。

そして人ごみに消えた有希を追いかけていった。

あたしはただ呆然と立ち、二人の消えた方向を見つめていた。






有希の悲痛な視線と、正樹君の冷たい視線が忘れられない。

大切な二人を裏切ったあたしには、悪魔という言葉がふさわしい。





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