悪魔の微笑み





あたしたちの前には、大きな観覧車があって。

その観覧車は止まっているというのに、一番上に人影が見える。





「馬鹿だよなぁ。

試運転中なのに乗るなんて」



「完全に機械も壊れてしまったみたいで、下りてこれないみたいだよ」



「観覧車高すぎるもんなぁ。

救助は何日後になるだろ」




近くでボヤき声が聞こえた。






観覧車の上に取り残されている人物が、正樹君と有希だという確率は極めて低い。

だけど、不吉な予感がしてならなかった。

第六感は、こういう時に当てになる。






「高校生くらいの女の子らしいぞ?」




そう言っている間にも、観覧車の窓から人の顔が見える。

その顔を見た瞬間、あたしの心臓は止まりそうになった。






あたしが見たのは……

涙で頬をぐしゃぐしゃにした有希だったからだ。







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