悪魔の微笑み
おもむろに携帯を取り出し、有希に電話をかける。
数回の呼び出し音の後、電話に出る有希。
「玲!!」
有希の声は、叫び声に近い。
「有希……」
裏切り者のあたしは、なんて言葉をかけたらいいのか分からない。
だけど有希は……
「助けて……」
精一杯、その震える声で助けを求める。
「玲……怖いよ……」
「有希……」
大切な友達だから。
その命すら危険にさらされているから。
出来ることなら、助けたい。
いや……
助けることは、あたしにしか出来ない。
「有希、待っててね」
あたしはそう言って電話を切る。
そして、目の前の正樹君に向き直った。