悪魔の微笑み





おもむろに携帯を取り出し、有希に電話をかける。

数回の呼び出し音の後、電話に出る有希。




「玲!!」




有希の声は、叫び声に近い。




「有希……」




裏切り者のあたしは、なんて言葉をかけたらいいのか分からない。

だけど有希は……




「助けて……」




精一杯、その震える声で助けを求める。




「玲……怖いよ……」



「有希……」






大切な友達だから。

その命すら危険にさらされているから。

出来ることなら、助けたい。




いや……



助けることは、あたしにしか出来ない。







「有希、待っててね」




あたしはそう言って電話を切る。

そして、目の前の正樹君に向き直った。






< 278 / 307 >

この作品をシェア

pagetop