悪魔の微笑み





有希の身体をしっかりと抱きしめる。

もはや力の残っていないあたしには、象のように重い。

だけど……負けない!!





観覧車の窓から飛び立つ。

ぼんやりと下の景色が見えて、足が震えた。

だけど、あたしなら出来ると言い聞かす。





地上をめがけ、緩やかに降りようとする。

なのに、消えそうなあたしの身体は、もはや機能しなくて。

有希を抱えたまま、真っ逆さまに落下する。




空気抵抗すら驚異だ。

片翼が飛び、もう片翼は折れ曲がる。

もう、有希を抱く身体の感覚すらない。

視界がきらきらと輝き、真っ白になった。







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