悪魔の微笑み
「玲」
どこからともなく、あたしを呼ぶ声が聞こえる。
あたしの大好きな、あの声。
もう二度と聞けないと思ったあの声だ。
「あたし……生きてるの……?」
あんなに憔悴したはずなのに、なぜか力が溢れているあたしの身体。
あたしは上半身をベッドから起こした。
その瞬間、身体をぎゅっと抱きしめられる。
あの香りがして、心地よくて。
「くっ……苦しいよ、輝」
愛しい人の名を読んだ。
「もう、無茶すんじゃねぇ!!
二度とすんじゃねぇ!!」
彼は苦しそうにそう言って、あたしの身体を抱きしめたまま震えていた。
……初めて彼の弱さに触れた。
強くて、大胆で、だけど、弱さだってある。
そんな彼がこの上なく愛しい。
だけど……
だけど………
「力が……」
彼に触れる度、みなぎってくるこの力は何だろう。