悪魔の微笑み
いや……
「良かった、じゃない!!」
あたしは叫んでいた。
正樹君もつられてビクッと飛び上がるが、あたしはそれどころではない。
だって……
だってこの状態じゃ……
あたしがデートをすっぽかしたことになってるじゃん。
お兄ちゃんの馬鹿!!
「正樹君、ごめん!!」
あたしは思いつく限りの言い訳を並べる。
急用で……お兄ちゃんが倒れて……
だけど、それは支離滅裂で。
正樹君はあたしを見て、苦笑いした。
そして、もういいよと悲しい顔で告げた。
あたしの恋は、泡となって消え去った。